既存の床は、古いコンクリートと木の床が手前から奥へ交互に縞になっている。表層には機械油が部分的に強く染み込んでいる。それらは、よいのかよくないのかどちらなのだろうか。工場内の床は、これまで4回にわけ、管捲き場をはじめ、織り場の4 分の3を新しいコンクリートの床に打ち直してきた。残りは真ん中の織り場の手前半分。これをどうしていくのがよいのだろうか。どの観点に立つかでそれは180度変わってくる。 この場に老若男女が入り、安全に、汚れることなく活動できるようにすることを一番に考えれば、最後に残ったこの部分も他と同様にして新しく土間を打つのがよいだろう。また同時に、この木とコンクリの感じ、油の描いた跡、それらから様々なこの場の履歴を読み取れるのも確かで ある。 
いまこの残った床の部分は、私たちがこれまでの行為をしている中でともにあり、私たちはその上を歩き、時折修繕をし、真ん中の一角には木の床を開けて床下の土を固め三和土のようにし、火鉢を置いたりできる場所をつくったりしてきた。幾たびも水で床を洗い流しもしてきた。 そうする中で、この床は、過去からの歴史を刻みつつ、今を生きて変化している。行為を重ねてきた上で、残す、残さない、どちらの道をとってもそれは過去= 現在= 未来と地続きで繋がることができると言える。今であれば、この床を残しても、以前は懸念されたような過去の亡霊に足を止められてしまうことはなく、ただ趣きとは違う、確かな感覚をもって未来を臨むと言うことができる。 しかし現実的にそのままではやはり危ない箇所もある。それを修繕し、可能な範囲で既存の床を残す。木の床を上げ床下の現在の状況を確認する。床板の裏側や板を支える根太は腐れ、さらに根太を受けるものがない。そこでコンクリートを固め根太受けをつくり、新しい木材で根太を入れ合板を敷き、その上に元の床板を戻す。 他コンクリ部分にも導線を考えモルタル等で手を加えていく。かつてこの上に織機が置かれていたことや働く人が通っていたことの履歴や、中断の後動きだしてからの新たな履歴を感じとれ、かつ、その上を気にせず歩いて今の活動も重ねられる、そういう状況をつくる。 
「形として何が残り、何が無くなり、空気として何が残り、何が無くなり、何が生まれるのか。」 
この場は、その問いとその時の応えを乗せて、これからも変動するだろう。形を変えるために動くのではなく、動くことで内から変化していく。
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