3棟が連なった工場の前面は右端から1棟と3分の1のところまでガレージが作られていた。工場と、手前に離れて造られた2 階建ての元寄宿舎の間に鉄骨等を用い屋根をかけて作られたものだ。工場外壁に被せられていたトタンを外すと、古い下見張りの状態が見える。板は薄く、乾いた蜂の巣なども出てくる。ガレージの屋根材を留める金物が固く噛み合う部分をペンチ等で外す。屋根を外し、下地を外し、骨組みを外していく。これが古い木造であっても、鉄骨他の比較的新しい建材であっても、空間を生む行為に代わりはない。 ガレージを外し空が開いて、間近に山が見える。夕方から風が出てくる。この地域のこの季節の強い風は、これからもっと吹く。剥がれたものや屑が線路に飛ばないうちに作業を済ます。
 本来外としてあるはずの、工場のおもての半分近く。隠れていた、その隠していた部分を取り払えば、ようやく工場の正面全体が見える。3、4日ぶりに再訪して、これほど景色が変わるということに驚く。 物がなくなるということではなく、空間をつくっているということ。絵を描くとき、削ることも大事な描くことの要素であるように、ガレージがあったことも、こうしていま外すことでこれほど清々しい状態を感じられるということは、それも悪いことだったのではない。 当時はそこにガレージがあることで、他の場所、庭が庭として考えられたのだったりすることだとか。
夜、風が強く冷たい。坪庭から見上げると、窪みの底からたくさんの星が見える。
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