2006年の夏、あらためて工場を訪れる。工場主の「どうにかしたい、けれどもどうしたらいいかわからない」思いに対してまず行なったことは、大量の不用物や傷んでしまった物たちの廃棄だった。工場の中には織物に関連していた物のみがある状態にする。その後、工場主とともに機械油で固まっていた織機を磨き、足りない部品を作り、止めていた電気を通して織機を動かした。「ガシャン、ガシャン、」と金属の筬がリズミカルに空間を叩き、4つの杼が左右に飛び交う。糸は掛けない。布を織るのではなく、音を鳴らす。鉄の塊の反復運動と力強い音、飛び交うシャトルの動きが工場の空気を動かす。それはあたかも、19年の停止期間に工場内に沈殿した澱を攪拌し、流れに乗せて押し出していくような景色だった。
2006年秋にはその様子を一般公開したが、行為は展示で終わることをしなかった。それがむしろ始まりとなって、場を動かす行為は続くことになる。