隠された向こうでは何が起こるのか。人は期待する。 整経場を分解する前に周りの建物部分との境に張った防炎シートは、作業の際に土や埃などの汚れが内部に入りすぎないように、そして建物が無くなった後は雨が入ってこないようにしたものだ。その時には工場内の暗部を囲っていたシートが、建物を分解し外部になった場所から内部を囲うものに意味が反転する。暗部は「外」、光のある場所に転換している。
やわらかい壁のようなシートは、時折吹きぬけようとする強い風を帆のように受けながらバタン、バタン、と音を鳴らし、新たな外と内の境界を示す。 それまで当たらなかった所に光があたり、時間によってその影が動いていくのを確かめるように眺める。 埃を受け、光を受け、風を受け、壁から染み出した油が垂れるのを受けとめながら、白いシートが巨大なパノラマのスクリーンのように「この向こう」を映し出す。